*このゼミでは,基本は進化やその他の科学的アプローチとの関連性を踏まえることになります.そうしたアプローチと遠いテーマの場合,他の先生を当たってください.王道的な人類学や考古学,あるいは現代的テーマの哲学的分析については,担当教員の守備範囲外になります.

ゼミの紹介

ごく簡単にゼミの紹介をしておきます.

関連する授業

「科学文化論B」(Q2)で自然哲学の入門的な講義,「科学文化論A」(Q4)で自然哲学の発展的な講義を行っています.ゼミ希望者or所属の方はできる限り,この両者を履修しておいてください.また「性と生命における尊厳」(Q3)という授業で進化生物学の概論も話しています.これらの授業で扱っている内容から大きく外れるテーマはこのゼミでは選択不可能だとお考えください

ゼミでやること

私はあまり実験もフィールドワークもやらないので(データ集め+一定の統計処理などは行いますが),ゼミの目的はみなさんが一人で文献を読み,それを検討して適切にまとめられるようになってもらうことです(強調点は三つあります).年2〜3回はみなさんの興味関心に沿って,自分一人で調べたことを発表してもらう予定です.

このゼミで選択可能なテーマ

基本は私の専門から大きく外れないテーマでお願いします.ただ,私の論文・本を見ろと言われてもハードルが高いので,少しばかり説明を加えておきます.基本は哲学的な問題意識を哲学以外のさまざまな分野の研究と照らし合わせて色々考えてみようというアプローチです.たとえば進化生物学や心理学の研究を踏まえて道徳性の起源を考えてみたり,考古学や人類学の研究を踏まえて国家が何で大事なのかを考えてみたり,といった具合です.関連する科学の視点から哲学的問題を考察する,という感じでしょうか(下図の上側).もちろんその逆もできて,「考古学ってどういう意味で科学なの?過去をどう科学的に考察できるの?」とか,科学の諸々を哲学的に分析することもできます(下図の下側).


*認識論・方法論というのは哲学のアプローチの一つです.私が行うのはこの認識論的・方法論的考察が多いです.

また,哲学以外の他の分野といっても実に色々分野があるわけですが,私が多少なりとも関心を持って理解できるかもしれない分野は限定されます.たとえば心理学(特に発達・社会・動物),神経科学,進化生物学(特に行動を含む生態学,進化発生生物学),考古学(特に日本,ヨーロッパの新石器時代まで),経済学(特に実験経済学),精神医学,歴史学などです.基本は直接的に人間の諸々を対象にする分野で,物理学や化学を参照することは(私は)稀です.また,冒頭にも書きましたが,王道的な人類学や考古学,あるいは現代的テーマの哲学的分析などは,他のゼミを当たってください

関連文献

例えば以下などが挙げられます.

  • ジョセフ・ヘンリック. 2019. 『文化がヒトを進化させた―人類の繁栄と〈文化-遺伝子革命〉』,白揚社(Amazon
    文化進化関係で最新の著作です.色々まとまっていて良い本です.
  • リチャード・ランガム. 2020. 『善と悪のパラドックス ーヒトの進化と〈自己家畜化〉の歴史』,NTT出版(Amazon
    →ヒトの協調性と暴力性の両方がどう進化してきたかを考察している書籍です.
  • ジョナサン・ハイト. 2014. 『社会はなぜ左と右にわかれるのか:対立を超えるための道徳心理学』,紀伊國屋書店(Amazon
    →道徳という哲学のテーマを心理学で考えるとどうなるか.道徳心理学の良い入門書です.

Last modified: 12/17/2023